おすすめの歴史小説 vol.14
はじめに
今回は永井路子さんの『北条政子』を紹介します。
この物語は北条政子の半生を描いた作品です。
物語に関係する出来事
『北条政子』に登場する出来事を年表にまとめると以下の通りです。
- 1159年 平治の乱。源頼朝が伊豆へ流罪となる
- 1176年頃 頼朝と政子が結婚。この頃に大姫をもうける。
- 1180年 頼朝挙兵(山木討ち、石橋山の戦い、鎌倉入り、富士川の戦い)
- 1182年 亀の前事件(詳細はこちら)
- 1183年 倶利伽羅峠の戦い。源義仲入京。
- 1184年 義仲vs源義経。源義高(義仲の子)誅殺。
- 1185年 壇の浦の戦い。乱後、頼朝と義経対立。
- 1189年 奥州合戦
- 1190年 頼朝上洛
- 1192年 頼朝、征夷大将軍に
- 1194年 富士の巻狩。源範頼誅殺
- 1199年 頼朝死去
- 1203年 比企能員の乱
- 1205年 牧氏の乱
- 1216年 源実朝、唐船建造を命じる。
- 1218年 源実朝暗殺
この物語は実朝の暗殺で幕を閉じます。かの有名な政子の演説を登場させないことで、「一人の愛にあふれた女性」としての政子の姿を描いています。見どころは次の3つです。
①政子の成長
政子にはいくつもの転機が訪れます。中には頼朝を選ぶといった自らの意思で行動したものもあれば、大姫・頼朝・三幡の死のように政子にとってショックな出来事もありました。
自らの内なる声に心を乱されながらも、政子は成長していきます。
②鎌倉を支える者へ
政子は当初、鎌倉の主となった頼朝の行動を理解できませんでした(義高、静御前の子や範頼を殺したり義経を死に追いやったことなど)。
「鎌倉のために非情になる」という頼朝の考えを理解しようとしなかったと言えるでしょう。
けれども、頼朝が亡くなり、自らが「鎌倉を支える者」となってようやく頼朝の気持ちを理解していきます。その結果が安達盛長一族への対応や比企一族の討伐に繋がっていきます。
③政子の愛
この物語で描かれる政子は「愛にあふれる女性」です。政子は夫にも子供にもひたすら愛を注いでいました(そのせいで夫の愛人や息子の妻に嫉妬したり、思ったことをすぐに行動に移してしまうわけですが)。
しかし、政子が愛を注ぐ相手が必ずしも政子に応えてくれるわけではありませんでした。むしろ、鎌倉幕府の中心的存在だからこそ、御家人とのトラブルに発展したり、親子関係に亀裂が入ったりしました。
女として、母としての苦悩がかいま見えます。
おわりに
この物語で描かれる北条政子からは、決して「悪女」の姿ではなく、「一人の女性」「母」としての姿が見えてきます。