偉人たちの演説 東西比較
世界の名演説ベスト5
例えば、世界の名演説としては、次のものが有名です。
- キング牧師 「I have a dream」(1963年8月28日)
- ウィンストン・チャーチル 「We shall Fight on the beach」(1940年6月4日英国議会下院で)
- ジョン・F・ケネディ 「Ask Not What Your Country Can Do For You」(大統領就任演説)
- ネルソン・マンデラ 「An ideal for which I can prepared to die」(大統領就任演説)
- リンカーン 「人民の、人民による、人民のための政治」(ゲティスバーグ演説)
では、日本の名演説にはどのようなものがあるでしょうか。
①北条政子の演説
承久の乱の際、朝廷と対決することに対し、御家人たちは動揺していました。
そこで、政子は御家人に対し、「頼朝の御恩は山よりも高く海よりも深い」と頼朝の功績を話した上で、「御恩を忘れて京方(=朝廷側のこと)につくのか、とどまって奉公するのか、今すぐ申せ」と御家人たちに行動を促しました。
この結果、御家人は結束して朝廷と戦うことを決意し、見事幕府方が勝利を収めました。
②織田信長の演説
桶狭間の戦いの際、今川軍の軍勢に比べて織田軍の軍勢が少なかったため、家臣たちは進軍を止めようとしました。
それに対して信長は、「今川軍は徹夜で兵粮を担ぎ、鷲津・丸根砦を攻撃して疲れた武者たちである。それに引き替え、こちらは新手の軍である。それに『小軍で大敵を怖れることはない、運は天にある』という諺は知っているであろう」と故事を引き合いに出しつつ、敵味方の状況を冷静に判断し説得にかかります。
さらに続けて、「敵がかかってくれば退け、敵が退けばかかれ。敵を練り倒し、追い崩すことは間違いない。敵の首は取らず打ち捨てよ。戦いに勝った者ならばこの場に臨んだ者すべては家の面目であり、末代までの高名である」と戦いに勝った後の未来を示し、自軍を奮い立たせました。
こうして信長軍は勝利を収めました。
③勝海舟の演説
戊辰戦争中のこと、勝海舟は江戸総攻撃中止の交渉に向かう途中、命を狙われていました。
それに対し海舟は「安芳(=勝海舟のこと)の恐るるところは、其一身の危険ではない。国家の前途の如何を憂ふるのである。一時の客気(=血気)に逸って暴虎憑河の勇を振るうものは快は快であろうけど国家の憂うる士の為し得る処ではない」と我が身の危険を顧みず交渉に臨みました。
結果、勝の交渉により江戸総攻撃は免れました。
おわりに
洋の東西を問わず、優れた演説には人々を鼓舞する、ビジョンを語る、自分の指名を理解している、といった共通点があるのかもしれません。
参考文献・参考サイト
- 歴史探偵「北条政子」
- 2022年6月15日放送
- コリン・ソルター 大間知知子訳
- 『世界を変えた100人のスピーチ』(原書房、2020年)
- サイモン・マイヤー ジュレミー・コウルディ著 池村千秋訳
- 『スピーチの天才100人 -達人に学ぶ人を動かす話し方-』(阪急コミュニケーションズ、2010年)
- 堀新
- 『日本中世の歴史7 -天下統一から鎖国へ-』(吉川弘文館、2010年)
- 近世名将言行録刊行会
- 『幕末明治名将言行録』(原書房、2015年)