変装と日本史

はじめに

「変装キャラ」と聞いてあなたは誰を思い浮かべますか?
「ルパン3世」のルパンや「名探偵コナン」の怪盗キッド、最近なら「SPY×FAMILY」のロイド・フォージャーを思い浮かべるかもしれません。

けれども、歴史上の人物も変装したエピソードが残っています。今回は3つ紹介します。

①鉢の木

鎌倉時代のある雪の日、上野国(現在の群馬県)佐野渡しの路傍にある貧しげな民家に、諸国遍歴の僧侶が一夜の宿を求めました。民家の主人は粟飯を炊き、自らが大切にしている盆栽三鉢を薪にして暖をとり、その僧侶をもてなしました。
民家の主人、もとい佐野源左衛門常世は「一族に所領を横領されこのような貧しい暮らしをしているが、御家人として鎌倉に一大事が起これば鎌倉に駆けつけ、合戦で目覚ましい武功を立てる」と旅の僧に語りました。
それをみた旅の僧は「ご覧のような者で大したことはできないが、もし訴訟などで鎌倉に来られたら何かの力になろう」とその主人に言いました。

後日、鎌倉から緊急の動員令が下されると、常世も鎌倉に駆けつけます。幕府首脳部に呼び出された彼は、宿を泊めた僧の正体が鎌倉幕府5代執権北条時頼と知って驚きます。

時頼は常世が横領された土地を取り戻した上、常世が薪にした盆栽にちなんだ所領を常世に与えました。

佐野常世の忠誠心と北条時頼の約束に応えようとする姿が印象的なエピソードですね。

②稲刈りの手伝い

江戸時代のあるとき、米沢藩の老婆が稲の取り入れをしていたところ、夕立にあって困っていました。そこへ、2人の武士がやってきて稲の取り入れを手伝ってくれました。

そこで、老婆はお礼として新米の餅を持って武士の元を訪ねると、武士の正体は米沢藩藩主の上杉鷹山でした。

この話からは民と身近に接する鷹山の姿が見えてきます。「名君」と呼ばれるのも納得です。

③逃げの小五郎

幕末、ペリーが来航すると、幕府は江戸湾防備のため、江川太郎左衛門英竜に品川台場の新設を命じます。その際、桂小五郎は江川の従僕になりすまし、海岸測量について回っていました。
桂小五郎が茶店で休んでいると、茶店の老婆が桂小五郎の顔を見て、「お前は若いが非凡だ。今から志を立て刻苦勉励すれば栄達するだろう。速やかに心を決して適当の業務を選び、大いに青雲の志を立てて怠るな」と告げました(後年、桂小五郎はこのことをしばしば人に語っていたそうです)。

また、禁門の変によって長州藩が朝敵になった頃、新撰組は長州藩の人間を1人残らず捕まえようとしました。当然、桂小五郎もお尋ね者となります。
そこで、桂小五郎は乞食に扮したり、女装(といっても女性の手拭いで顔を隠す程度)したり、三本松の芸妓の幾松に助けられたりしながら、京都を脱出しました。

桂小五郎の人生は「芸(変装)が身を助ける」を体現するかのようですね。

おわりに

あなたのそばにも、 変装しているが実は偉い人だった、ということもあるかもしれませんね。

参考文献・参考サイト

一坂太郎
『日本史リブレット 人070 木戸孝允-「勤王の志士」の本音と建前-』(山川出版社、2010年)