狂歌
はじめに
先週の大河ドラマ「べらぼう」ではついに大田南畝が登場しましたね。この人物は狂歌師として有名な人物です(実際ドラマの中でも狂歌を披露されていましたし…)。
そこで今回は狂歌がテーマです。
狂歌とは
狂歌とは五・七・五・七・七の31文字で皮肉や滑稽味を表現する和歌のようなものです。ルーツは万葉歌の戯笑歌、古今集の諧謔歌にあるとされています。
実は狂歌自体、鎌倉時代や室町時代にも詠まれていたようでしたが、江戸時代中期(天明期)の頃に流行し、一大ブームとなりました。
ちなみに、もともと詠み捨て(その場のノリで詠んで終わり)だった狂歌を集めて本にしたのが蔦屋重三郎でした。
以下、狂歌のジャンルを3つに分けて紹介します。
①パロディ
狂歌には、既存の和歌を面白おかしくアレンジしたものがあります。例えば、以下のようなものがあります。
- 歌よみは 下手こそよけれ 天地の 動き出して たまるものかは
- 一つとり 二つとりては 焼いて食う 鶉(うずら)なくなる 深草の里
前者は古今和歌集の仮名序(「やまとうたは人の心を種としてよろづ言の葉とぞなれにける。(中略) 力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思わせ、男女の仲をもやはらげ、たけき武人の心をもなぐさむるは歌なり」)を、後者は藤原俊成という人物の和歌(「夕されば 野辺の秋風 身にしみて 鶉鳴くなり 深草の里」)を面白おかしく表現しています。
②政権批判
また狂歌には、当時の政治に対する不満をオブラートに包んで表現したものもありました。代表例は以下の通りです。
- 年号は 安く永しと 変はれども 諸色高直(こうじき。物価が高いことを表現しています) いまにめいわ九
- 世の中に 蚊ほどうるさき ものはなし ぶんぶといふて 夜も寝られず
- 白河の 清きに魚の すみかねて もとの濁りの 田沼恋しき
- 白河の 岸打つ波に 引き換えて 浜松風の 音の烈しさ
一つ目は田沼政権を、二つ目と三つ目は寛政の改革(松平定信が行った政治改革)を、四つ目は天保の改革(水野忠邦が行った政治改革)を批判しています。
③時事
さらに、歴史的な大事件なども狂歌で表現することもありました。代表例としては以下のものがあります。
- 田や沼や 汚れた御代(みよ)を 改めて 清らかにする 白河の水
- 太平の 眠りを覚ます 上喜撰 たった四杯で 夜も寝られず
- 三月は ひいな祭りか 血祭りか あけに染めたる 桜田の雪
一つ目は寛政の改革の始まりを、二つ歌はペリー来航(お茶の上喜撰と船の蒸気船をかけています)を、三つ目は桜田門外の変(井伊直弼が暗殺された出来事)を表しています。
おわりに
ユーモアに物事を伝える、という点が狂歌の魅力なのかもしれません。
参考文献・参考サイト
- 黒田日出男 監修
- 『図説 日本史通覧』(帝国書院、2014年)