おすすめの歴史小説 vol.23

はじめに

今回は高田郁さんの『あきない世傳 金と銀』シリーズを紹介します。
この物語は江戸時代、呉服屋の五十鈴屋に奉公に上がった幸がやがて女将となり、五十鈴屋を大きくしていく物語です。
今年の4月にはドラマも放送予定です。

物語の時期

物語の時期は以下の年表の時期に相当します。

  • 1715年 享保の改革(〜45年)
  • 1732年 享保の飢饉発生
  • 1772年 田沼意次が老中に

とりわけ幸が奉公に上がった時期は享保の改革の最中で、「モノが売れない時代」でした。そのような状況にあって、幸が知恵を絞って奮闘する様が全13巻に渡って描かれています。。

物語のポイントは次の三つです。

①幸の半生

五十鈴屋に奉公に上がった幸は、その賢明さを見込まれ、三兄弟(四代目徳兵衛、惣次、智蔵)に嫁ぎます。

四代目徳兵衛の時は商いの基本や商品の知識を学び、惣次の時には五十鈴屋に客を呼ぶ工夫をするようになり、やがて智蔵の頃になると幸が本格的に采配を振るうようになります。

智蔵の死後は江戸にも五十鈴屋を出店し、幸はその主として小紋染めや藍染め浴衣などの品々を世に送り出していくことになります。幸の半生が描き出されています。

②五十鈴屋の船路

第1巻の時の五十鈴屋は、敷銀(嫁入りする側が嫁ぐ時に預けるお金のこと。実は四代目徳兵衛は幸の前に菊栄という人物と結婚していましたが、離婚したため、敷銀を返す必要がありました)の三十五両も払えないような苦しい状況でした(そもそも、四代目徳兵衛にもかなり問題がありました)。

しかし、幸や奉公人たちの奮闘によって、店の規模は大きくなり、ついには江戸にも店を構えるようになります。

けれども、全てが順調だったわけではありません。とりわけ江戸に出店してからは、疫病や火災、ライバル店の音羽屋からの嫌がらせ、といった試練に見舞われます。

それでも、人の支えや仲間の店の協力もあり、五十鈴屋は経営の基盤を着実に固めていきます。
その様子が、本のタイトルにも込められています。

③買うての幸い、売っての幸せ

五十鈴屋の軸になるのが、「買うての幸い、売っての幸せ」という言葉です。
店の利益だけではなく、生産者や客の利益をも重視する精神は、幸や奉公人たちに根ざしていきます。

さらに、五十鈴屋は商売で得た利益を仲間のためにも使います(江戸で火災が起きた時は会所の再建費用を出しています)。
この結果、五十鈴屋はお客や他店の信頼も得ることで、さらに繁盛していきます。

そして五十鈴屋の精神は、次世代へと受け継がれていきます。

おわりに

今年の大河ドラマ「べらぼう」と時期が近いのでセットで楽しめるかもしれません。