夢と日本史
はじめに
誰しも、眠っているときに夢を見た経験があるかもしれません。
良い夢だったり、悪い夢だったり、非現実的な夢だったり、その内容はさまざまでしょう。
今回はそんな夢の話がテーマです。
夢を見るメカニズム
私たちの脳は、睡眠中であっても活性化した状態にある時期があるそうです。
そして、脳が活性化している間に夢を見るのだそうです。
昔の人々も、さまざまな夢を見ていました。
夢にまつわるエピソードを3つ紹介します。
①菅原孝標女の夢
『更級日記』の中では、菅原孝標女の夢の中で僧侶が登場し、法華経を習うようお告げをするシーンが度々登場します(その時の彼女は『源氏物語』に夢中になりすぎて、その忠告を聞いていないようでしたが)。
また、実母が孝標女の将来を占わせたところ、悲しく泣き伏す姿と宮中の華やかな姿の二つに分かれていたそうです。
実は、宮中の華やかな様子というのは菅原孝標女が乳母になることを示していました(実際に彼女は宮仕えをしている時期がありました)。
けれども、物語に夢中で宮仕えも途中で辞めてしまったために、前者の嘆き悲しむ姿の方が実現してしまいました。
夢にはお告げや教訓めいた要素もあったと考えていたのかもしれません。
②北条政子の夢買い
ある日、北条政子の妹が政子に自分が見た夢の話を語ります。その夢とは、高い峰に登って太陽と月を左右の袂にいれ、橘の実が三つなった枝を髪に挿している、というものでした。
その夢を聞いた政子は妹に対し、「それは悪い夢だから私が買い取る」と言ってその夢を買い取ってしまいます。
けれども実は、その夢は吉夢でした。太陽と月は天下を、三つの橘の実は豊かさを示していたのです。
その夢を買い取った効果もあったのか、のちに政子の夫の源頼朝は平家を滅ぼし、鎌倉幕府を開きました。
③虎になった北条早雲
正月二日、北条早雲は「一匹のネズミが広々とした平原に生えている2本の大杉を根元から食いちぎり、しまいには虎に変身」した夢を見ます。
実は2本の杉とは上杉氏(扇谷上杉氏と山内上杉氏のこと。上杉氏は元々関東管領を務めていた関東の一勢力でした)を、ネズミは北条早雲のことを示していました(北条早雲は子年生まれでした)。
この夢を北条氏が関東の主になる吉夢とみた北条早雲はその後上杉征伐に乗り出します。小田原に入城し、伊豆・相模を平定すると、子孫の代には上杉氏(扇谷上杉氏)を滅ぼし、関東の一大勢力となりました。
おわりに
たかが夢、されど夢。
参考文献・参考サイト
- 川村裕子
- 『愛とゴシップの「平安女流日記」』(PHP文庫、2013年)
- 市古貞次校註、大島建彦校註
- 『日本古典文学体系88 曽我物語』(岩波書店、2016年)
- 江西逸志子原著 岸正尚訳
- 『小田原北条記』(ニュートンプレス、1980年)
- アラン・ホブソン著 冬樹純子訳
- 『夢の科学 -その時脳は何をしているのか-』(講談社、2003年)
- アリス・ロブ著 川添節子訳
- 『夢の正体 -夜の旅を科学する-』(早川書房、2020年)