おすすめの歴史小説 vol.22
はじめに
今回は火坂雅志さんの『天地人』を紹介します。
この物語は直江兼続の生涯を描いており、2009年には大河ドラマにもなりました。
物語に関連する出来事
- 1576年 上杉謙信、足利義昭の命により上洛目指す
- 1577年 手取川の戦い。織田信長を破る
- 1578年 上杉謙信死去。御館の乱勃発。上杉景勝が家督を相続。
- 1582年 武田家滅亡。本能寺の変。山崎の戦い
- 1583年 上杉景勝、羽柴秀吉と同盟結成
- 1584年 小牧・長久手の戦い
- 1586年 上杉景勝上洛。豊臣秀吉の支配下に入る
- 1590年 小田原攻め。秀吉、天下統一を実現
- 1591年 千利休切腹
- 1596年 慶長の大地震
- 1597年 上杉家、会津へ国替
- 1598年 豊臣秀吉死去
- 1600年 関ヶ原の戦い
- 1614〜15年 大坂の陣
この物語の見どころは次の3つです。
①上杉家を守る戦い
直江兼続の生涯は上杉家を守る戦いの連続でもありました。
上杉謙信の死後、御館の乱が勃発し、それが一段落したかと思えば織田信長による猛攻を受けました。
信長の死後、上杉家は秀吉のもとで束の間の安定を得るものの、関ヶ原の戦いで西軍についたことで、存続の危機に立たされます。
それでもこうした危機を乗り越えられたのは、兼続の判断を上杉景勝が支持していたからに他なりません。
ここから、兼続と景勝の主従の絆をも感じさせます。
②受け継がれる「義」の心
上杉謙信は、何よりも「義」を重んじ行動していました。その精神は、謙信死後も上杉家の行動指針となります。
また、直江兼続は師でもある謙信の遺言から自らの「義」を探すようになり、やがて「愛」(=仁愛)という言葉にたどり着きます。
さらに、「義」の心は上杉家に人質として送り込まれた真田幸村にも受け継がれていきます。
「利」を重視し行動するものが多い時代だったからこそ、「義」によって行動する姿はなおさら輝くのでしょう。
③直江兼続の一生
直江兼続の生きた時代は、生存競争の激しい時代でした。
上杉家も謙信の死後バラバラになりかけましたし、武田家も織田家も豊臣家も、カリスマ性を持ったリーダーの死後、分裂し滅んでいきました。
ではなぜ上杉家は生き残ることができたのか。
それは謙信以来の「義」の心と、その教えを受け継いだ直江兼続がいたからに他なりません。
おわりに
この物語からは、上杉家のために生きた男の一生が見えてきます。