力持ちな日本史
はじめに
大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」が放送されてから1ヶ月が経ちますね。
第1話では花魁道中に遭遇した長谷川平蔵が花の井に惚れてしまうシーンがありました。
あのシーンを見て、「花魁道中遅っ」と思った人もいるでしょう。実はあの衣装、めちゃくちゃ重いのです。
今回は花魁の衣装も含め、「歴史上の重い衣装」を紹介します。
①十二単(女房装束)
まず最初に紹介するのは十二単です。これは衣装や髪を合わせて約20kgほどあるそうです。
衣装では、映え(色の組み合わせ)を意識して重ね着をします。素肌に近いところから順番に袴、単、袿、打衣(光沢を出した衣のことです)、表着と重ね着していき、仕上げに裳と唐衣を着用します。袿を何枚も重ね着することもあり、この段階でかなり重そうです。
加えて、平安時代の女性には「長くて美しい黒髪」が求められました。そのため、髪の毛は自分の背丈ほどはあったと言われています。
昨年の大河ドラマ「光る君へ」では朝廷で働く女房達の姿もありましたが、これだけ重いものを身に纏いながら働いていたと思うと改めて女房達の凄さを感じさせますね。
②大鎧
次に紹介するのは大鎧です。平安時代〜鎌倉時代、上級武士が着用していました。これはトータル約30kgほどありました。
まず鎧を着る前に鎧直垂というものを着用します。次に鎧を着用し、最後に兜を被りました。そして手には太刀や軍扇といった武器を持ちました。
鎧には敵の攻撃(特に矢による攻撃)から急所を守るために頑丈かつ急所を守るようなパーツがついています(例えば鎧では袖・草摺という部分で腕や腿を、鳩尾という部分で心臓をガードします。また兜にはしころという部分で横や後ろからの攻撃から頭を守っていました)。
さすがに大鎧は重すぎたのか、のちに胴丸といって軽装化した鎧が登場します。さらに安土桃山時代には甲冑は具足と呼ばれ、鉄で作られるようになりました。
③花魁
最後に紹介するのは花魁です。花魁の衣装の重さは約24kg〜約40kgほどで、だいたい30kgあたりが一般的です。
花魁の衣装はとにかく豪華に着飾ります。
衣装は長襦袢、掛け襟、中着と重ね着し、その上に打掛をかけて帯で結びます。打掛で約5kg、帯で約3kgはあるそうです。
また、髪も豪華に装飾しました。
前髪には大櫛、後髪には笄(こうがい)や前びら櫛止め、花かんざしなどを挿していきます(笄は8本、前びら櫛止めは6本ほどを髪の前後左右に挿していました)。髪の装飾だけでも3〜6kgはありました。
さらに花魁道中の際には三枚歯の下駄を履いて移動します。この下駄だけでも約4kgはありました。
これは確かにスタスタ歩けず、花魁道中がゆったりした歩みになるのも納得です。
おわりに
今回紹介した人々はきっとポーカーフェイスが上手だっただろうと思います。
重い衣装を重く見せないことも、一つの技術ですね。
参考文献・参考サイト
- 井筒雅風
- 『日本服装史 女性編』(光村推古書院株式会社、2014年)
- 井筒雅風
- 『日本服装史 男性編』(光村推古書院株式会社、2014年)