おすすめの歴史小説 vol.20
はじめに
今回は北方謙三さんの『破軍の星』を紹介します。
この物語は北畠顕家の激動の生涯を題材とした作品です。
物語に関連する出来事
- 1333年 鎌倉幕府滅亡
- 1334年 建武の新政。北畠顕家、陸奥へ下向
- 1335年7月 中先代の乱、これを機に尊氏が離反。
- 1336年1月 足利尊氏が入京。
- 同年1月 顕家が京都を奪還、尊氏は九州へ。
- 同年5月 湊川の戦い。尊氏、再入京を果たす
- 同年11月 尊氏、建武式目制定。室町幕府が事実上成立。一方で後醍醐天皇は吉野へ脱出。
- 1337年8月 顕家、再び上洛を目指す
- 1338年5月 石津の戦いで顕家戦死。
この物語の見どころは次の3つです。
①北畠顕家という人間
北畠顕家は、公家でありながら卓越したカリスマ性を持ち、陸奥の平定に努めてきました。
けれどその矢先、足利尊氏が反旗を翻したことで、顕家は尊氏の討伐を命じられます。
その過程で彼は戦が民にもたらす弊害や朝廷の腐敗加減を知ることになります。
自分さえ良ければいいと考える後醍醐天皇や側近たちを時に批判しながらも、顕家は尊氏との戦いに身を投じていきます。
②安家一族の夢
当主の安家利通は、一族の血脈が存続することを何より優先する一方で、陸奥に日本とは独立した国を作る夢を密かに抱き、陸奥をまとめ上げる人間を長く待ち望んでいました。
一方で秀通や正通は安家一族が歴史の表舞台に出ることを望んでいました。
どちらも、顕家という存在に引き寄せられていきます。
③足利兄弟
足利尊氏は建武の新政に対する御家人たちの不満を結集し、幕府を開くことを目指しています。
そして弟の直義は公家の連中を排除し幕府を樹立した暁には、政権の一翼を担おうとしていました。
そんな彼らの前に顕家が立ちはだかります。
一時は顕家に敗れ九州へ逃げ延びるものの、勢力を盛り返し再び顕家と対峙していきます。
おわりに
時代の動乱に翻弄されながらも懸命に生きた1人の青年の生き様に注目です。