おすすめの歴史小説 番外編

はじめに

今回は番外編として永井路子さんのエッセー、『はじめは駄馬のごとく~ナンバー2の人間学~』を紹介します。


この作品は北条義時や徳川秀忠のようにナンバー2として成功した者と、源義経や明智光秀などナンバー2たりえなかった者の事例から、ナンバー2にはどのような能力が必要なのかを教えてくれる一冊です。

作品の構成

  • 第1章 北条義時 -はじめは駄馬のごとく-
  • 第2章 源義経 -スタンドプレーが怪我のもと-
  • 第3章 徳川秀忠 -花咲くモグラ戦術-
  • 第4章 平時忠 -平家政権の仕掛人-
  • 第5章 明智光秀 -途中入社の栄光と挫折-
  • 第6章 藤原不比等 -大忠臣の完全犯罪-
  • 第7章 視点を変えて -ナンバー1からの採点-
  • 対談 城山三郎・永井路子

このエッセーからはナンバー2で成功する人間には少なくとも3つの資質があることがわかります。

①忍耐力

北条義時や徳川秀忠のように、ナンバー2の周りには優秀な人間が多くいたり、ナンバー1が偉大すぎて存在が霞んでしまったりすることがあります。

しかし、彼らはしかるべきタイミングをじっと待つ忍耐力を持ち合わせていました。
その結果、しかるべきタイミング(北条時政の失脚や徳川家康の死)が訪れた時、彼らは真価を発揮することができました。

②黒子に徹する力

この本で登場するナンバー2には優秀な人間が多いです。
しかし、真に重要なのは「いかに功績をあげてもナンバー1の顔を立てる」かにあります。

平時忠はこのことを理解していたからこそ、平家が滅んでも生き残ることができましたが、源義経はナンバー1(源頼朝)よりも目立ってしまったため、滅んでしまいました。

③何手先をも読む力

平時忠や藤原不比等の事例を見ると、彼らは先々の見通しを立て行動する力に長けていたことがわかります。

時忠は自分の妹(平滋子。後白河上皇の寵愛を受け高倉天皇を生みます)、義兄(平清盛。清盛の娘の徳子は高倉天皇に入内し安徳天皇を生みます)、妻(後に安徳天皇の乳母になります)を通じて平家政権繁栄の礎を築きました。

また、藤原不比等は法律の専門職としての経験を積み、忠臣としての評判を得ることで、やがて大宝律令の編纂や遣唐使の派遣、平城京遷都に関わり、天武・持統天皇への復讐を果たしました。

この点、明智光秀は本能寺の変後のシナリオを読み違えたことで、「三日天下」に終わってしまいました。

おわりに

この本はナンバー2としての心構えがよくわかる一冊です。