おすすめの歴史小説 vol.18
はじめに
今回は島田荘司さんの『写楽 -閉じた国の幻-』を紹介します。
この物語は現代編と江戸編に分かれており、現代編では元大学教授が東洲斎写楽の正体に迫る様子が、江戸編では蔦屋重三郎が東洲斎写楽と出会う様子が描かれています。
なお、蔦屋重三郎は2025年の大河ドラマ『べらぼう -蔦重栄華乃夢噺-』のモデルです。
物語に関係する出来事
『写楽 -閉じた国の幻-』に関係する出来事は次のとおりです。
- 1787〜93年 寛政の改革
- 1794年 第154回オランダ商館長の江戸参府
- 1797年 蔦屋重三郎死去
- 1798年 第155回オランダ商館長の江戸参府。ヘンミー客死。
- 1823年 シーボルト来日
- 1826年 第162回オランダ商館長の江戸参府
この物語の見どころは次の3つです。
①写楽研究の足跡
東洲斎写楽とは極めて短期間しか登場せず、その前後の動向は一切不明です。
そのため、写楽の正体について今までいくつもの説が提唱されてきました(斎藤十郎兵衛説、葛飾北斎説など)。
現代編の主人公、佐藤貞三はこうした過去の写楽研究を紹介、その問題点を指摘するとともに、あらためて写楽の正体に迫ろうとしています。
現代編を読むだけでも、今までどれだけ写楽が人々の関心を集めてきたかがよくわかります。
②蔦屋重三郎という人物
江戸編の主人公、蔦屋重三郎。彼は鎖国下の日本が抱える問題を見抜き、海へと目を向けていた先進的な人物でした。
そんな彼は既存の体制(硬直した幕府、権威ばかり振りかざす役人、千両役者の怠慢など)に風穴を開ける何かを探していた矢先、1枚の絵に出逢います。この出逢いから東洲斎写楽が生まれることになります。
ある意味で写楽は蔦屋重三郎が生み出したと言えるでしょう。
③写楽の正体
現代編の主人公、佐藤貞三は従来とは異なるアプローチで写楽の正体に迫ろうとします。
当初、彼は「平賀源内写楽説」を考えていましたが、年代の違いなどの現実に直面します。
そんな彼は現地調査や「人魚のため息」での議論を経て、ある一つの可能性に到達します。
果たして写楽の正体とは
おわりに
蔦屋重三郎がどのような人物だったか、なぜ彼は写楽を世に送り出したのか、そんな謎に迫る一冊です。