教科書に載らない紫式部
はじめに
2024年の大河ドラマ「光る君へ」は紫式部が主人公です。そこで今回は紫式部がテーマです。
紫式部について
紫式部は藤原為時の娘です。27歳の頃、藤原宣孝と結婚するも、夫は病死してしまいます。
その後、『源氏物語』を執筆すると、その評判が藤原道長の耳に入り、中宮彰子(藤原道長の娘)に仕える事となりました。
ここでは、教科書に載らない紫式部の姿を3つ紹介します。
①無知なふりをする紫式部
紫式部が宮仕をしていた宮中は女の園です。当時の感覚では、何か特別な才能を持っている女性は褒められる対象ではありませんでした。
そのため、『源氏物語』の作者という鳴り物入りの紫式部は宮中の女性から嫉妬されていました。
そこで、紫式部は「一という字さえ書けない」と馬鹿なふりをします。
けれども、その甲斐あって宮中の女性の紫式部に対する印象は変わりました。
②アンニュイな紫式部
紫式部は『紫式部日記』で仕事場や人間関係の愚痴を記しています。
例えば、一条天皇が道長邸を訪れた時のこと、紫式部は美しく手入れされた庭を見ても、「面白いことやめでたいことを見聞きしても心が重い」とぼやいています。
また、水面を泳ぎ回る鳥を見ても「本当は水面下で必死に足を動かしてしんどい。私の人生も水の上に浮いたも同然の不安な人生だ」とネガティブです。
さらに、一条天皇を歓迎する音楽が流れていても、紫式部は一条天皇の神輿の担ぎ手の苦労に思いを馳せ、気苦労の多い自分と共感していました。
とことんネガティブモードな紫式部ですね。
③毒筆な紫式部
そんなネガティブな紫式部でうが、毒舌ならぬ毒筆の一面を見せています。
『紫式部日記』ではライバルの清少納言のことを「賢そうに漢文を書き散らしているが、よく見ると全然なっていない」とか「私は人と違うと強調したがる人の末路はろくなものにならない」と一刀両断しています。
さらに、同僚の和泉式部に対しても和歌の才能を認める一方で、敦道親王とのスキャンダルがあった彼女を「女性の品性に欠ける」と評していました。
おわりに
紫式部は自分の得意分野では得意になれる人なのかもしれません。
「光る君へ」では今後どのように紫式部が描かれるのでしょうか。
参考文献・参考サイト
- 川村裕子
- 『愛とゴシップの「平安女流日記」』(PHP文庫、2013年)
- 山本利達校注
- 『新潮日本古典集成<新装版>紫式部日記 紫式部集』(新潮社、2016年)