「推し活」の日本史

はじめに

先日、テレビのニュースで「推し活」が取り上げられていました。ここ最近「推し活」がブームになっているように感じます。

推し活とは

「推し活」とは、アイドルや俳優、アニメのキャラクターなど自分が好きになった対象(=推し)を応援することを指します。「推し」の対象はアイドルや俳優、YouTuberなど実在の人物のほか、ゲームのキャラなど二次元のもの、鉄道や建築物など多様です。

こうしてみると「推し活」はつい最近の活動のように思えます。しかし、昔の人も現在と同じように推し活をしていました。3人紹介します。

①松尾芭蕉

1人目は松尾芭蕉です。江戸時代の俳人で、『奥の細道』の作者です。松尾芭蕉は歴史好きとして知られており、平泉に思いを馳せた句が「夏草や 兵どもが 夢のあと」という句です(特に源平合戦が好きだったようです)。

そんな松尾芭蕉の推しが木曾義仲です。松尾芭蕉は「自分が死んだら木曾義仲の墓の隣に埋めて」と頼んでいたと言われています。

②芥川龍之介

2人目は芥川龍之介です。明治から昭和の初めにかけて活躍した小説家で、『羅生門』など多くの作品を残しました。

そんな芥川龍之介の推しは夏目漱石です。夏目漱石の主宰する勉強会に参加したときは緊張のあまり、膝を震わせるだけで話すことができず、「先生に嫌われるかも…」と落ち込むほどでした。だからこそ、夏目漱石に自分の作品を評価されたときは、大変感激したそうです。

ちなみに、芥川龍之介は夏目漱石の『吾輩は猫である』にあやかって『吾輩も犬である』という作品を書きました。 ただし、芥川龍之介本人は犬が大の苦手だったようです。

③太宰治

3人目は太宰治です。無頼派の小説家で、『走れメロス』から『人間失格』まで様々な作品を残しました。

そんな太宰治の推しは芥川龍之介です。ノートにひたすら「芥川龍之介」と書き記したり、芥川賞候補にノミネートされたときには審査員の佐藤春夫のもとに芥川賞への想いを長々と綴った手紙を出したりしました。

結局、芥川賞を受賞できず、太宰に難色を示した審査員の川端康成に対し脅迫めいた手紙を送りました。

おわりに

昔の人の「推し活」も愛が深いですね。

参考文献・参考サイト

株式会社マイナビ
「推し活とは?意味と具体的な活動の例を解説」(https://woman.mynavi.jp/)(参照:2023-5-19)
本郷和人
『東大教授が教える やばい日本史』(ダイヤモンド社、2018年)
進士素丸
『文豪どうかしてる逸話集』(KADOKAWA、2019年)
真山知幸
『偉人名言迷言事典』(笠間書院、2021年)