おすすめの歴史小説 vol.10
物語に関係する出来事
『みをつくし料理帖』に関わる出来事を年表にまとめると以下の通りです。
- 1802年 大坂で水害発生。澪、天満一兆庵の芳と出会う
- 1812年 澪、江戸に来る。つる家で奉公を始める
- 1813年 澪、とろとろ茶碗蒸しを作る。つる家が火災で焼失。
伝説の遊郭あさひ太夫の正体が幼馴染の野江と発覚 - 1814年 つる家、元飯田町で再建。ふきがつる家で奉公を始める
- 1815年 澪、小松原から求婚される。最終的に澪は料理人としての道を選ぶ。
- 1816年 澪、小松原と決別。嗅覚を失う。
吉原大火。又次があさひ太夫をかばい死去。吉原大火を機に澪の嗅覚が戻る - 1817年 芳、柳吾と再婚。澪がつる家から卒業
- 1818年 澪、源斉と結婚。あさひ太夫を身請けする。
澪、幼馴染の野江とともに故郷大坂に戻る
この物語の見どころは次の3つです。
①雲外蒼天
この言葉は幼い頃、澪が有名な易者から告げられたものです。澪の人生は艱難辛苦(かんなんしんく)が絶えない、けれどそれを乗り越えたら他の誰も拝めないような綺麗な空を見ることができる、とその易者は言いました。
その言葉通り、澪には次々と試練が訪れます(大坂での水害、つる家の焼失、登龍楼との因縁、嗅覚の消失、大事な人との別れ、など。特に第7巻の『夏天の虹』は泣けます)。
それだけに、試練を乗り越えた後のラストシーンはより感動を誘います。
②つる家で関わる人々
澪はつる家での奉公を通じてさまざまな人と出会います。つる家の種市、ふき、りう、ご近所のおりょう夫妻、謎の浪士小松原、医師の源斉、伊勢屋の娘美緒、戯作者の清右衛門、坂村堂、一柳の柳吾などなど。
中には、小松原や又次のように悲しい別れをする者もいました。それでも、澪は彼らとの出会いや別れを通じ、料理人として成長していきます。
③「食は人の天なり」
この言葉は澪の料理人としての核になっている言葉です(この言葉自体を教えたのは源斎ですが)。澪の料理には食を通じて人々が健やかになってほしいという祈りが込められています。
だからこそ、つる家の料理は人々を惹きつけるのでしょう。
おわりに
この作品は「料理」という視点から江戸時代の江戸・大坂の様子を描いた作品です。つる家の料理や江戸時代の生活に興味が湧いてくる一冊です。