おすすめの歴史小説 vol.4

はじめに

今回は『小説集 北条義時』(作品社、2021年)から、永井路子さんの『執念の家譜』を紹介します。
この作品は三浦一族にまつわる話です。三浦光村(三浦義村の子。鎌倉殿の13人では山本耕史さんが三浦義村役を演じています)の視点で話が展開しています。

物語に関係する出来事

三浦一族にまつわる出来事を年表にまとめると次のようになります。

  • 1180年 源頼朝挙兵。三浦氏は頼朝に協力
  • 1213年 和田合戦。三浦氏は親戚関係だった和田義盛を裏切る
  • 1219年 源実朝暗殺。裏で三浦氏が関与?
  • 1221年 承久の乱。後鳥羽上皇に味方した三浦胤義を裏切る
  • 1224年 伊賀氏の変。三浦氏は伊賀氏を裏切り成敗する側に回る
  • 1246年 宮騒動。将軍九条頼嗣が京都へ送還される。
  • 1247年 宝治合戦。三浦一族滅亡(と思われたが、実は生き残りがいた)
  • 1516年 三浦氏vs(後)北条氏。三浦一族滅亡

こうしてみると三浦氏の歴史は「裏切り」というワードが頻出しますね。
裏を言えば鎌倉幕府は極めて不安定なものだったのかもしれません。

さて、この物語の見どころは次の3つです。

①三浦から見た北条氏

鎌倉幕府成立以前は三浦氏の方が北条氏より大きな力を持っていました。しかし、鎌倉幕府ができると、北条氏が優位に立つようになります。
物語では随所に北条氏に対する対抗心が透けて見えます(残念ながら北条氏の方が一枚上手ですが)。

②三浦はいかに生き残ってきたか

源頼朝の死後、鎌倉には粛清の嵐が吹き荒れます。その過程で梶原、畠山、和田といった鎌倉幕府草創期を支えた御家人たちは滅んでいきます。
その中にあって三浦氏は、北条氏を倒す好機を目論みながらも周囲への裏切りと北条氏への忍従によって生き残ってきました。

③三浦の意地

けれども、三浦氏は「北条に一矢報いたい」という意地がありました。
実際に、三浦義村は北条義時死後の情勢に全てを賭けようとしましたし、光村は北条氏の世の中になっていることが分かってもなお北条との戦いを決意しました。彼らの行動からも、三浦氏としてのプライド、執念が伝わってきます。
そして三浦氏の執念は時を経て三浦道寸に引き継がれ、最終的に三浦一族は意地を貫き通して滅亡しました。

おわりに

『小説集 北条義時』には他にも海音寺潮五郎さんの『梶原景時』や高橋直樹さんの『悲命に斃る』などが収録されています。
御家人や将軍の立場から北条氏はどのように映っていたのか見てみるのも面白いかもしれません。