おすすめの歴史小説 vol.3
はじめに
今回は冲方丁さんの『はなとゆめ』(KADOKAWA、2016年)を紹介します。
この物語は清少納言が中宮定子に仕えた日々を回想しながら、『枕草子』を完成させた経緯を語った作品です。
物語に関係する出来事
物語で起きた出来事をまとめると以下の年表のようになります。
- 993年 藤原道隆、関白就任。娘の定子を一条天皇を中宮にする
- 995年 道隆死去。伊周(道隆の子)と道長(道隆の弟)の権力争い起こる
- 996年 伊周が左遷される
- 1000年 定子死去。清少納言は宮仕えを辞める。
清少納言が宮仕えをしていた7年間に起きたことをありのままに回想しています。
この物語の見どころは次の3つです。
①定子一家の栄光
清少納言は主人の定子やその家族の様子はもちろんのこと、宮中のイベントや外出先に至るまで、事細かに回想しています。
後半部分(道長が実権を握り、定子たちが没落していく様子)と対比をなすことで、定子一家の栄華を際立たせています。
②清少納言の中宮定子に対する忠誠心
この物語の主軸になるのが、清少納言の定子に対する忠誠心です。
実際、物語の中で何度も「私は(定子の)番人である」という言葉が登場します。
定子を取り巻く環境が変わっても、清少納言の定子に対する思い、また定子が清少納言に抱く信頼は変わらないことがわかります。
③いかにして『枕草子』は生まれたのか
物語の途中で清少納言は定子から頂き物の「紙」をもらいます。その際のやり取りをきっかけに『枕草子』は誕生しました。
では清少納言は誰のために、何を書こうとしたのか。物語を通じて、清少納言が『枕草子』に込めた思いが明らかになっていきます。
おわりに
『枕草子』に対する見方が変わるような一冊です。