「犬公方」徳川綱吉
はじめに
「教科書に書いてあることって変わらないよね」
これは私がよく周囲に言われることです。
しかし、最近の教科書では評価が見直されている人物が大勢います。
今回はその一人、徳川綱吉について扱います。
徳川綱吉について
徳川綱吉は「犬公方」と呼ばれ、生類憐れみの令を出した人物です。
生類憐れみの令は極端な動物愛護政策として知られているため、今まで徳川綱吉は「迷君」と考えられていました。
しかし、近年では綱吉は時代が必要とする価値観を生み出した「名君」として見直されています。
徳川綱吉見直しの動き
そもそも、綱吉が将軍だった時期は、まだ戦国時代の価値観が色濃く残っているました。人々は血や暴力を許容し、命を軽視する傾向にありました。
また、平和な時代に馴染めず、「かぶき者」となる人もいました。かぶき者は辻斬り、動物虐待、放火、喧嘩などを行なっていました。
言い換えると、平和な時代のはずなのに、物騒な世の中でした。
そこで、綱吉は自らの政策を通じて、平和な時代にふさわしい価値観を定着させようとします。3つ政策を紹介します。
綱吉の功績 その1
1つ目が武家諸法度の改訂です。綱吉は武士に対し、武芸にかわって礼儀や忠孝を求めました。そのために武士に学問、特に儒学を学ぶことを奨励させました。
これにより、綱吉は武士に対して、目上の者を尊重する、上下関係や秩序を重視するという価値観を定着させました。
綱吉の功績 その2
2つ目が服忌令です。親族が亡くなった際、血縁の近さによって喪に服す期間を定めました。服忌令は現在も忌引という形で引き継がれています。
この法令により、綱吉は家の秩序、上下関係を定着させました。
綱吉の功績 その3
3つ目が生類憐れみの令です。この法令は「犬」のイメージが強い法令ですが、実は動物の他にも捨て子・病人の保護といった内容も含まれていました。
なお、生類憐れみの令は綱吉の死とともに廃止されますが、捨て子・病人の保護に関する内容はその後も引き継がれました。
この法令を通じ、綱吉は「命を尊重する」という価値観を人々に定着させました。
おわりに
以上の政策を見てみると、綱吉は平和な時代にふさわしい、現在にもつながる価値観を作り上げた人物と言えるでしょう。
参考文献・参考サイト
- 磯田道史
- 『さかのぼり日本史(6) 天下泰平の道』(NHK出版、2012年)
- 山本博文
- 『こんなに変わった! 歴史教科書』(宝島社、2017年)
- 歴史ミステリー研究会
- 『昔の教科書とはこれだけ変わった! 日本史の新常識 』(彩図社、2020年)
- 横田冬彦
- 『天下泰平 日本の歴史<16>』(講談社、2009年)
- 歴史探偵
- 「龍馬と綱吉の真実」(2021年10月13日放送)